都会の若い人たちに本当の美味しいものを食べてもらいたいという思い-フェアビンデンの歩み①-

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このコラムでは、地域の生活者と連携して、大都市において安全で健康的な食の実践・普及を行い、地域の産物の販売活動を進めている「ワーカーズ・フェアビンデン」を紹介します。

サラリーマンやOL,学生が行き交う東京・神田駿河台のオフィス街の路地を少し入ると「日本の食と農を応援する店」という看板が目に留まりますが、それがフェアビンデン店舗です。お昼時になると、周辺のオフィス街からOLやサラリーマンや学生が「お母さんの手作り弁当」を求めにやってきます。

お弁当は、肉や魚の主菜を中心に野菜をたっぷり使い、ごはんには玄米や紫米が炊き込んでます。調理法は健康を気遣って塩分や脂分を抑えながらも、しっかりした味付けでとてもおいしいものです。栄養バランスを考え、素材の味を生かしたシンプルな料理を心掛けてマザーに良い食品に触れてもらう事で、次の世代を担う子どもたちの健康を守りたいという思いが込められているのです。

2003年に開店して以来、徐々に売り上げを伸ばし、2008年の売上は1800万円を超えました。その経営理念とおいしいお弁当のファンとなった顧客に支えられ、ビジネスとしても成功を収めていました。

フェアビンデンの店舗を切り盛りしているのは、石井正江氏です。彼女は、1973年に発足した東都生協で長年ににわたり商品開発や産地交流を担当してきました。農家グループ、食品メーカー、消費者と交流する中で「毎日口に入れるのものなのに、食品・食材に関しての情報が少なすぎる」「子や孫の世代の健康や、良い食品の流通を支えるためにも、消費者がもっと関心を持たなければいけない」と感じ、生協の仲間とともに新宿の事務所を借りて「フェアビンデン 食と農の研究所」を立ち上げ、学習会や会合を開くようになりました。

当初、「食と農について学び、語り合う場所が欲しい」と考えて立ち上げたフェアビンデンであるが、事務所の家賃費用はかさむ一方で、学習会活動だけでは、消費者への接点が拡がりにくい。そこで、さらに実践的な活動に取り組もうと、収入も上がり活動の幅も拡がるお弁当の製造・販売に着目しました。もともと料理付きで、調理師の免許も所有していた石井氏は「産地直送の食材を使う手作り弁当を都会の消費者に提供することで、フェアビンデンの理念の実現に近づくのではないか?」と考えたのです。

2003年、神田小川町に「ワーカーズフェアビンデン 食と農の談話室」というお弁当の製造販売の実験店舗を出店し、国産食材と手作り調理にこだわったお弁当の製造販売を開始しました。

100%手作りの弁当の評判は徐々に広まり固定客も増える中、2007年にフェアビンデンの理念と活動に賛同し応援してくれる取引先の農家、大学研究者など多様な人々から新たな出資金を得て、NPO(特定非営利活動法人)法人「食農研センター」へと組織を変更しました。それと同時に、より立地の良い駿河台に店舗を移して、現在に至ります。NPO法人設立にあたっては、理事長として元明治大学教授の滝沢昭義氏を迎え、現在は、研究者を中心とする研究事業と、弁当など実践事業の二本柱で活動領域を拡げました。

石井氏は、メニュー開発のプロであり、東都生協時代からの経験を活かして、材料の選定、組み合わせ、味付けだけでなく、原価構成を意識しながら日々のお弁当メニューを開発しております。都会の多様な世代の人々の嗜好も理解しており、都会の人々にはなじみが薄く、そのままでは受け入れられにくい地方の地場食材も、受け入れられる方法・味付けで提供しております。

また、穏やかながらも意志の強さも感じさせる人柄で、グループを導き、取引先や外部団体との交流、交渉も一手に引き受けて行っています。ビジネスだけでなく運動面においても、人脈の広さを生かして、各所での講演などに精力的に活動を行ってます。フェアビンデン店舗の代表の傍ら「食料と生産と消費を結ぶ研究会」事務局常任理事、東京食健連代表理事、料理教室や専門学校の講師などとしても活躍しております。

フェアビンデン店舗の収入の内訳は、①店舗でのお弁当販売 ②会食用のオードブルの仕出し ③地方の特産品の販売 の3つからなります。

営業時間は、月曜から金曜までのウィクーデーであり、スタッフは毎朝六時には弁当の仕込みを始めます。昼時にはお弁当を求める顧客が並び、顧客対応に追われます。店舗には15席ほどテーブルがあり、店内でも食べられるようにしています。一部の顧客には配達も行っています。

顧客は女性が2/3、男性が1/3の割合であり、20代から60代まで幅広い年齢層がまんべんなく来店します。一人暮らしの20歳男子や、仕事疲れで健康と美容に気を遣うOLやパートの女性などが、野菜と体に良い食品を取りたい、と考え来店する方が多いです。顧客の多くはリピータであり、口コミで新規顧客が徐々に増加していきました。

美味しい産直野菜を使いながら割安のお弁当を作るには、一つの食材を幾通りにも調理できる戦前生まれのお母さんの知恵と「もったいない」という主婦感覚が必要です。主婦の感性と知恵を活かして、そのアイディアを形にしたのが、フェアビンデンのお弁当であり、それがフェアビンデンのお弁当が成功している理由なのかもしれません。

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